変わり続ける部分と変わらない部分のために くるり Liberty &Gravity レビュー
Liberty & Gravity / くるり
Twitterにてくるりの「Liberty & Gravity」という曲を好きだという変わっている人を見かけた。
僕以外にこの曲を好きだという人を初めて見つけたのでうれしくなって記事を書いてみる。
1、くるりは変化するバンドだ
まずはくるりがどんなバンドなのかということに触れておきたい。
単刀直入に言うと、くるりはどんどん変化するバンドである。
今、適当に二つの曲を貼ってみた。記事の始めに貼った「Liberty & Gravity」とも比較してほしいのだけど、これ全部同じバンドの曲なのである。
極端にテイストの違う曲を貼ってみたわけではなく、くるりはどの曲もどの曲をテイストが違っている。
くるりのように次々とスタイルを変えてしまうバンドを僕はほかに知らない。
童貞くさいフォークソングみたいなファーストアルバム、『さよならストレンジャー』。
2枚目は突然、ジャガジャガうるさいオルタナに目覚めた『図鑑』、
今度は急にキャッチーになって王道のJPOPに目覚める、打ち込み系のダンスビートを取り入れた『TEAM ROCK』『THE WORLD IS MINE』。
このまま、電子音中心のポップな感じなるのかなぁとおもいきや、次のアルバム『アンテナ』では外国人ドラマーのクリストファーを起用した、ドラムだけが意味もなくファンキーなロックアルバムとして仕上げる。
その後もUKロックをフューチャーしてみたり(『NIKKI』)、ストリングスを取り入れてクラシック風に仕上げてみたり(『ワルツと踊れ Tanz Walzer』)、原点回帰して初期のくるりのようになってみたり(『言葉にならない、笑顔を見せてくれよ』)またまたトランペッターがバンドに急に加入したり(『坩堝の電圧』)。
それで「Liberty & Gravity」が収録されているアルバム『THE PIER』では様々な国の音楽を取り入れてみたりと。
何度「急に」や「取り入れて」と言う言葉を使った分からないくらいに、
一つのスタイルにこだわらず、突然に変化し、いろいろな音楽を取り入れる。
これがくるりの音楽の形である。
2、変わり続けられる自由さ
さて、本題の「Liberty & Gravity」についてなのだけど、
これまた一風変わったおかしな曲だなぁと思う。
民謡みたいな伴奏に、放課後の部活の練習みたいな腑抜けたトランペット。
エレキっぽいサウンドも混ぜながら、手拍子に『よいしょ』のかけ声
あぁ、今こういう和洋折衷な多国籍音楽にはまってるんだなぁっていうのが露骨に感じられる。
でも、こういう好奇心旺盛さと気楽さがくるりの魅力の一つだと思う。
好奇心旺盛にいろいろなジャンルの音楽に手を出すし、気楽だから、一つのことに固執せず、変化し続ける。
いいかえるとくるりは、音楽に対して自由なバンドだということだと思う。
変わり続けられることの自由、
それがくるりのひとつの本質だと思う。
3、変わるくるりの変わらない部分
今までさんざんくるりが変化するバンドであることを説明してきたけど、実はもう一つの顔もある。
矛盾するようだけど、くるりは”変わらないバンド”、でもある。
ここまでスタイルが変化していっても、ちゃんとくるりの曲になっているということが分かる不思議なバンドなのだ。
フォークソングでも打ち込み系ポップスでも、バリバリのロックな曲でも、最終的にちゃんとどれもくるりっぽく仕上がってしまう。
くるりの曲がくるりらしい理由、半分は初期からずっと一緒にいるベーシスト佐藤征史のコード進行、もう半分はボーカル岸田繁の声のおかげである。
佐藤征史のどこか懐かしく少し寂しいベースに、牧歌的でのほほんとしている岸田繁のボーカルがあれば、どんな曲でもたちまちくるりの楽曲になってしまう。
「Liberty & Gravity」も例外なくそうだ。
どれだけ様々な要素を組み合わせて変な曲を作っても、佐藤征史がベースで支えて、岸田繁が伸びやかに歌いあげれば、どう転んだってくるりの曲になる。
変わるくるりのいつだって変わらない部分。
これももうひとつのくるりの本質である。
4、重さのある自由
「Liberty & Gravity」、自由と重力。
ちょっと強引な解釈だけど、自由と重力という言葉はくるりの本質を端的に表現しているような気がする。
変わり続ける部分「自由」と変わらないでいてくれる部分「重力」。
この二つが絶妙に組み合わさってくるりというバンドが出来上がる。
「Liberty & Gravity」はくるりがくるりであることを再確認させてくれる素敵な曲だ。
いつだってくるりはこの二つを持っていてほしいなぁと思う。
きっと誰の中にもある変わり続ける部分と変わらない部分のために。